「流通最前線」第2回は、無駄な活動を削減し、サービス向上とコスト削減を両立させ、経営資源を最適に活用する経営手法として注目を集めているABM(Activity Based Management)の中心的役割を担うABC(Activity Based Costing)について、その概要を掲載する。今回は特にその道のオーソリティであり世界150カ国に15000人を超えるコンサルタントを擁するプライスウォーターハウスクーパースの日本法人プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント株式会社大竹博之氏にご寄稿(『オールトイレタリーズ2001』)頂いた原稿を改めてここに掲載するものである。

              
プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント株式会社
製造・流通インダストリ事業部 ABM担当
 大竹 博之 氏

 情報技術を駆使した流通業自らの企業努力により、消費者は自分のより欲しい物を欲しい時に入手できるようになった。つまり、流通業は自らの役割を「同じ物を同じように提供する」流通から「魅力的な商品・組合せを最適な活用シーンと共に提供する」流通へと変化させてきたのである。さらにその欲しい物を入手する場所もスーパーからコンビニへ、昨今ではインターネットの急速な普及に伴い、コンビニからインターネットへとこれまで我々が経験した事のないスピードで変わろうとしている。
このような市場の変化スピードに対して我々企業は、本当に本質的なところから変わる事ができているのであろうか。ただ商品をWeb上に掲載し、消費者がインターネットを通じて購入してくれるのを待っているだけではなかろうか。
 バブル崩壊を経験し、リストラが一段落した事により、企業の次の打ち手としては物を1円でも安く作り、1円でも安く売るというコストダウン競争へと変化していく中で、BPRと言う名の基にeビジネスへ着手や、メーカー・卸・小売と協同でSCMへの取組みへ着手する流れは理解できる。
しかしながら、自社のコアコンピタンスである競争力源泉活動や付加価値活動を把握した上でなければ、協同取組みに参画したとしても逆にそれらに取り込まれてしまい、自社のみが衰弱してしまったり、期待するほどコスト削減が実現できなかったという結果を招いてしまう。
ハーバード大学のマイケル・ポーター教授は「企業は競争優位性を獲得する為に、価値を基準としたビジネス・プロセスおよび製品が必要である」と語っている。つまり、コスト競争力は特定の業務活動を競合企業よりも効率的に行う事によって獲得されるのであり、その優劣は、企業の全ての業務活動によって決定されるものである。決してその活動の一部や、概要だけで判断し、決定するものではない。
 このようにして獲得されたコスト競争力にこそ、これから突入していく“21世紀の流通新時代”での成功のキーワードが存在する。そのキーワードを発見し、企業の本質的な改善/改革を実現するためにABC(Activity Based Costing、活動基準原価計算)が不可欠なのである。




 ABC(Activity Based Costing、活動基準原価計算)とは“ビジネスをアクティビティ(活動)単位に細かく分類し、アクティビティ単位のコストを算出すること”である。(図1)
 “ビジネス”とは業務の営みのことである。ビジネスの範囲は個人の単位でも、組織の単位でも、企業全体でも、さらにはサプライチェーン全体や業界を跨ったビジネスでも、またそれらの一部分でも良い。ABCは業務をアクティビティ単位に細かく分類することにより、分析のスコープや規模を自由に設定できる。
 また活動=アクティビティだからといって、人間の活動に限定する必要は無い。設備やコンピューターが自動的に遂行している一連の業務も活動の集まりと考えられる。
アクティビティ単位にコストを計算する最も簡単な方法は“ABC=「単価」×「時間」×「回数」”で計算することである。
 「単価」はその活動を実行している人や設備の時間あたりのコストである。たとえば年俸1000万円の上級職であれば1分あたり100円のコストがかかる。また、時間給1200円のパートであれば、20円/分である。この上級職とパートのコストにはなんと5倍の違いがあるのである。


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