◇アメリカ共同取材A◇



◆アメリカ線香メーカーのトップ・ジェニコ社
  米国市場の50%シェア−日本香堂


アメリカ共同取材の第3報は、98年に日本香堂が買収(100%日本香堂資本)したアメリカでも老舗のインセンス(線香)専門会社・GENIECO(ジェニコ)を訪問、マイク・鶴賀社長とデイナ・モリソン副社長からジェニコの歴史と主力ブランド「GONESH(ガーニッシュ)」の現況並びにアメリカのインセンス市場概況などの説明を受け、さらに翌々日には日本香堂の全米を束ねる(ジェニコ社も含む)ニューヨーク事務所の辻経三郎所長から、日本香堂の北米・南米地区における進出状況を聞いた。



シカゴ市内のノーズ・ラフリンストリートに面したジェニコ社の本社・工場(土地・ビルとも自社のもの)は、写真のように古くて頑丈な建物からも推測できるように、1923年(大正12年)にロシア生まれのヨーロッパ育ち(ワルシャワ工科大学卒)、ローレン・ラドズキナス氏によって創業された。社名のGENIECOは、アラジンの魔法のランプに登場する魔神の名“GENIE(ジェニー)”と、“COMPANY(カンパニー)”のCOを組み合わせたものである。
また、2代目のアンディ社長(ローレン氏子息)は、「インセンス製造者として最も重要な変革は、ストロベリー、ココナッツ、チェリーという現代的な香りの開発・導入である」として、商品ラインアップにスティックインセンスを導入して大成功を収めた。現在は鶴賀社長とデイナ副社長の二人三脚で経営・マーケティングなどを取り仕切っているが、敦賀社長によれば「私とデイナのコンビは、1+1=3の力になっている」と言って憚らない。
デイナ副社長は営業・販促・財務・生産と多くの責任あるポジションを担当しており、販売部門では「先に会社更生法を申請した全米2番目の小売業・Kマートを始め、グロッサリーなどが倒産していく中で、インセンスの製造・販売メーカーとして色んな業態を相手にしているだけに、悩みが大きい」と言う。
同社は現在、全米50州を18のグループに分けて42名の営業マンが活動を展開しているが、特に4つの業態としてグロッサリーストア(食品)、H&Bストア(黒人向けヘアケア)、ドラッグストア(医薬品)、ニューエイジスストア(20〜30代の自然体層=瞑想など)の存在を挙げ、積極的に取り組んでいる。
また、昨年のアメリカ同時多発テロ事件後に、同社ではアメリカ人に人気のアップルパイの香り「ガーニッシュ・インディビジブル」(インディビジブルの意味は、“我々の心は1つ。何人たりとも割くことはできない”)を新発売したが、アメリカでは幼稚園の頃から右手を左胸に当てて、アメリカ国旗に対する忠誠(国歌の暗唱)を誓う習慣が出来ているほどで、そこにインディビジブルという言葉が出てくる。こうしたアメリカ人の“心”に訴えた商品も開発している。
ガーニッシュのブランド名は、ヒンズー教の守護神の名から採用されたもので、創業時の会社名が「ヒンズー・インセントカンパニー」であったことからも理解できる。ジェニコへの社名変更は、65年に2代目のアンディ社長が引き継いだ時。そして現在は、アメリカ市場において匂いつき線香ではトップメーカーに成長している。

同社の主力製品は、インセンスではバレンタインデー、マザーズデー(母の日)、インデペンデントデー(独立日)、ハローイン、サンクスギビング(感謝祭)、ホリデー(休日)など、アメリカの行事や休・祭日に因んだものから、アフリカン・アメリカン(正式なアメリカ黒人のことを今ではこう呼ぶ)向けのヘリテージシリーズ、パッケージが美しい花柄のシャワー・オブ・フラワーなど。また、フレグランスキャンドルではクラシックコレクション、ガーニッシュキャンドルなどとなっている。
線香メーカーであるジェニコとアメリカで競合するのは、ほとんどがフレグランスキャンドルメーカーであるが(アメリカのローソク市場は約50%をフレグランスキャンドルが占めているという)、但しインセンスの生産はしておらず、インドやタイからの輸入品を扱っている。なおキャンドルなどを含むホームフレグランス市場は、約220億ドル(約3兆円)と言われている。
インセンスのメーカーとしては、西海岸にあるオルファクトリーとジェニコの2社が突出しており、後は5〜10万j規模のメーカーが各地にある。キャンドルメーカーの輸入品を含めて、アメリカのインセンス市場は1億j(約130億円)くらいのマーケットと見られている。
ジェニコ社の売上高は約500万j(約6億5000万円)で、テロ事件の影響があったものの、昨年度は5〜6%の伸びを見せている。売上げに占める比率は国内が80%、海外輸出が20%で、輸出国は日本、カナダ、メキシコ、イギリス、マレーシア、チリなどで、これから考えているのがオーストラリアとのことである。
同社の利益率は20%前後と、メーカーとしてはかなり高い。しかもパレット(50ケース)単位の場合は思い切ったサービス価格で提供している。これは低価格品については中国で半製品を作り、アメリカで完成品にしているなどのシステムによるものである。心臓部であるフレグランスのオイル(調合)についての研究は、すべて本社・工場で実行している。
本社・工場のスタッフは25名プラスパート約10〜15名(前述の営業マンはすべて契約制)。アメリカは基本的に週給制であり、鶴賀社長自ら1人1人“ハグ”(肩を抱き合う)しながら、「よく頑張ってくれた」と給料を手渡しており、このスキンシップによるコミュニケーションが大事であるとか。また、ハンディキャップを持つ人達への下請けなども実施している。

一方、このジェニコ社を含む決算の元締めとなるのが日本香堂ニューヨーク事務所(辻経三郎所長)である。営業など活動の拠点はロスアンゼルス事務所だが、すべてのコントロールをニューヨーク事務所が行っている。3年半前に日本香堂がジェニコ社を買収するときに仲立ちしたのが辻所長であり、買収後しばらくは辻所長自身がジェニコ社の社長を兼務していた。
今や《お香》は、米国でも現代社会の緊張感から解放してくれる“癒し作用2のあるトレンドとして定着しているが、世界のお香市場の中で、オンリーワン企業を目指す日本香堂の米国でのお香市場シェアは5割を超えており、これにはアメリカ生活の長い辻所長の存在は大きい。
同氏は85年に米国日本香堂の取締役ニューヨーク事務所長に就任したが、53年に青山学院大学英米文学科を卒業後、チェース銀行に入行して渡米。58年にミネソタ大学大学院を卒業してニューヨーク高島屋に入社し、5番街店舗開店に携わり、また、78年にはニューヨーク三越に移り、パーク街店、ディズニー日本館内店などの開店にも携わった。日本香堂のニューヨーク事務所長になってからも、フランスのエステバン社買収、シカゴのジェニコ社買収などに尽力。さらにレストランビジネス(オーランド、サンパウロ)などのオープンとその経営・管理に実績をあげている。
ニューヨーク事務所は、辻所長と田辺賢一アシスタントマネージャーのスタッフは2人だが、仕事のテリトリーは広く、中味も濃い。日本香堂の格調高い“お香”各種の紹介や、香文化の普及・啓蒙、さらには癒し系・エキゾチック系世界の音楽(CD)とお香を組み合わせた「パシフィック・ムーン」の販売と啓蒙。オーランド、サンパウロのレストラン管理、ロス事務所の営業活動のサポートや財務管理、ジェニコ社の財務管理等々。まさにアメリカにおける日本の顔・辻氏の面目躍如といったところである。

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